銀河英雄伝説 die neue these 星乱 第1章の感想

「原作を読んでいない人を完全においていっている。」

 

見ていて途中でそう思いました。

でも、銀河英雄伝説ってのは、

 

だが、それがいい!」

 

というのは間違いないと思えますね。

作り手側もそれがわかっているから、いちいち細かい説明なんかしていません。だから、登場人物についてのプロフィールや状況の説明など全くありません。

 

「見たらこれが誰だかわかるだろう。」

 

わからない奴は見なくていいというばかりの作り方です。

ウォルフガング・ミッターマイヤーは見た目ですぐにわかります。オスカー・フォン・ロイエンタールはミッターマイヤーとのやりとりでそれとすぐにわかります。後に帝国の双璧と称される二人でさえこの調子ですが、そういう具合にたぐっていくとちゃんと全部わかるようになっています。

 

万事が万事この調子なのです。

ところが、さすがにこれはわからんだろうというところには、名前が字幕で入っていたりします。

 

「これは誰だ?」

 

と私が思ったところには、ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフがローエングラム候の元帥府に面会を求めてやってきたシーンです。マリーンドルフ家がゴールデンバーム王朝に見切りをつけ、やがて誕生するであろうローエングラム王朝への忠誠を表明するためにやってきた場所が、ラインハルトの元帥府だという説明は当然のようになんにもありません。その時、アポのなかったヒルダがとりあってもらえず困っていたところを、ラインハルトに取り次いだ士官って名前を覚えているでしょうか?

 

テオドール・フォン・リュッケなのですが、彼が登場したシーンには彼の名が字幕で表示されていました。さすがに、その場でどういう人だったかまで思い出せませんでしたけどね。

 

イゼルローン要塞の自室で、ユリアンが紅茶をいれて、ヤンが考え事をしているシーンがあります。タイミングは、貴族連合とローエングラム候が直接対決するリップシュタット戦役がはじまる前です。ヤンは、ユリアンとの会話で、

 

「人は勝つことばかり考えていると際限もなく卑しくなる。」

 

こういう発言しかしていません。

実は、この時ヤンが考えていたのは、イゼルローンから出征してローエングラム候の背後を脅かし、貴族連合と協力してローエングラム候を討ち取ってしまうという構想でした。あわよくば貴族連合を打ち破り帝国へ同盟の楔を大きく打ち込む事まで考えていたことでしょう。この時にヤンが何を考えていたのかは原作の読者であればほぼすべての人が知っていることでしょう。

 

徳間の銀河英雄伝説ではその事についてまったく触れる事はありまえせんでした。ところが、die neue theseではこの行間みたいなものをちゃんと補足していました。

 

ヤンとビュコックが公園で同盟の内乱について話し合うシーンです。ビュコックが、ヤンに、

 

「ラインハルトと同じ事を考えているのではないか?」

 

尋ねます。

ついでにいうと、このヤンとビュコックが密談をしている間、ユリアンは周囲を警戒して哨戒しています。この時のユリアンの心情は、ユリアン視点で描かれた外伝の2巻でしたっけ?を読んでいなければ知ることができなかったはずです。それが、1カット、セリフ1つでうまく表現されていました。

 

さて、TV放送時の銀河英雄伝説 die neue theseの評価は結構低かったように思います。

なんでかというと簡単で、原作読んでないと登場人物や背景、そしてヤン、ラインハルトたちが描く構想と戦略、それに沿った戦術の妙というのが理解できないからであろうと思われます。

 

「原作読んでから出直してこい!」

 

そういう作り方をしているのです。

 

だが、それがいい!」

 

銀河英雄伝説ファンに向けて作っているというのを私は強く感じますね。

足りない部分は見ている側が全部補完しながら楽しめばいいのです。それを踏まえて考えると、もうとにかく、細かいところにまで掘り下げて、考えて、しっかり作り込んであるのがわかります。多分というか、間違いなく私以上に銀河英雄伝説を好きな人が作っているというのを強く感じますね。

 

だから、その感想だって、なんの説明もなしに登場人物の名前がぽんぽん飛び出してくるわけです。読んで何が書いてあるかわからないと感じる方は、

 

「原作読んでから出直してこい!」

 

というわけです。

 

今回の映画をみることで新しく気がつくことが1つありました。

ラインハルトは、姉を取り戻すという最大の目的を早々に達成します。ラインハルトにとっては10年ほどの歳月ではありますけど。しかし、宇宙を手に入れるという目的を捨てたりはしませんでした。覇者になる事は、姉を取り戻すという目的のための手段でしかないとおもわれるのですけどね。ラインハルトの生真面目さが、はじめたことを中途半端なところで終わらせないという、そういうところがでているのだなぁとそんな事を思いました。

 

あと、銀英伝には銀河声優伝説という2つ名があります。

登場人物が多いから当然です。で、徳間の銀英伝に出演していた声優さんが今回も出演しているのですが、違う役をやっています。フレーゲル男爵なんかはセリフが多かったですが、その違いが妙に面白いと感じました。気がついたのは他に2~3名でしたけど、声優の役者ぶりを堪能するというのも銀河英雄伝説の楽しみ方の1つかもしれません。

 

原理主義に陥らなければ、最初から最後までわくわくした気持ちがずっと保たれることでしょう。話は、リップシュタット戦役の開戦前夜というところまで。次回予告がでるのですが、次回の最大の見せ場は、きっと

 

グリーンヒル大尉が動揺するシーンだな。」

 

と思えましたね。

まぁ、ラストでキルヒアイスの最大の見せ場になるのはまちがいないでしょうが。原作でいうと2巻までの内容です。今から読んでそれから映画館にいく価値は十分にあるクオリティだと思えます。

 

「原作を読んで、アニメ12話までみてから映画館にいけ!」

 

安心してそうすすめられる映画です。

 

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ちょっと目つきの悪いジークフリード・キルヒアイス

 

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